緑内障でも飛行機に乗れる?旅行前に知っておきたい注意点と安心対策
「緑内障でも飛行機に乗って大丈夫ですか?」と、患者さんからご質問をいただくことがあります。旅行や帰省など、飛行機に乗る機会は誰にでも訪れるものです。しかし、目の病気があると不安を感じてしまいますよね。
このブログでは、緑内障の基本的な知識から、飛行機に乗る際の注意点や工夫までを、患者さん向けにわかりやすくご紹介します。緑内障とは?
緑内障は、視神経という「目と脳をつなぐケーブル」が障害を受け、視野が少しずつ欠けていく病気です。進行はゆっくりですが、一度失った視野は元に戻りません。そのため、早期発見と治療継続がとても大切です。日本では40歳以上の20人に1人が緑内障といわれ、決して珍しい病気ではありません。
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緑内障の種類
緑内障といっても、いくつかのタイプがあります。
- 開放隅角緑内障:もっとも多いタイプ。房水(目の中の水)の出口は開いているが流れが悪く、眼圧が上がってしまう。
- 正常眼圧緑内障:眼圧は正常範囲でも視神経が弱いために障害を受ける。日本人に特に多い。
- 閉塞隅角緑内障:出口が狭く、急激に眼圧が上がる「発作」を起こすことがある。
- 続発緑内障:目のけがや糖尿病、薬の影響など別の原因から発症。
どのタイプも放置すると視野が狭くなり、日常生活に影響を及ぼします。
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緑内障の治療
治療の目的は「視野障害の進行を遅らせること」。現在の治療で視野を回復させることはできません。そのため、早期に発見して治療を続けることが重要です。
- 点眼薬:もっとも一般的。眼圧を下げる薬を毎日使う。
- レーザー治療:房水の流れを改善するレーザーを照射する。
- 手術治療:点眼やレーザーで十分に下がらない場合に行う。
特に点眼薬は毎日継続することが大切です。旅行中も忘れないように工夫しましょう。
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飛行機に乗ると眼圧は上がる?
飛行機の中は地上よりも気圧が低くなりますが、客室は「高度2000〜2500m程度」に調整されており、ほとんどの方にとって危険はありません。緑内障の患者さんも基本的には安心して搭乗できます。
ただし、注意が必要な場合もあります。
- 閉塞隅角緑内障の方:急性発作を起こす可能性があるため、搭乗前に必ず主治医に確認を。
- 手術直後の方:特に硝子体手術で眼内にガスが入っている場合、飛行機に乗るとガスが膨張して重い合併症を引き起こすため搭乗禁止です。
- 点眼管理が不十分な方:旅行中に薬を忘れると眼圧が上がり、進行のリスクが高まります。
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長時間フライトでの工夫
緑内障の方が長時間フライトをするときに注意したいのは、「乾燥」と「血流の滞り」です。
- 機内の湿度は20%以下になることがあるため、目が乾燥しやすい → ドライアイ点眼を持参すると安心。
- 時差のある旅行では点眼時間がずれやすい → 日本時間に合わせて使うか、主治医に「現地時間での使い方」を相談しておきましょう。
- 同じ姿勢を続けると血流が悪くなる → 時々立ち上がったり足を動かして、全身の血流を保つことが大切です。
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点眼薬の機内持ち込みについて
点眼薬は液体ですが、医薬品として問題なく機内に持ち込めます。国際線では100ml以下の容器に入れ、透明の袋に入れるルールがあります。長期旅行では診断書や薬の説明書を持っておくと、空港で安心です。
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旅行前に確認しておきたいこと
飛行機に乗る前に、以下の点をチェックしておきましょう。
- 眼圧が安定しているか
- 旅行日数分の薬があるか(できれば予備も)
- 診断書や薬剤情報を準備しておくか
- 術後間もない場合は主治医に必ず確認する
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旅行中の生活習慣で気をつけたいこと
飛行機に乗るときだけでなく、旅行中の過ごし方にも注意が必要です。楽しい時間だからこそ、普段の生活リズムが崩れやすくなり、それが眼圧や目の健康に影響することもあります。
- 睡眠不足を避ける:夜更かしや寝不足は眼圧を上げる要因になります。旅行先でもなるべく規則正しい睡眠を心がけましょう。
- アルコールの飲み過ぎに注意:少量なら問題ありませんが、過剰な飲酒は脱水を招き、血流のバランスを乱すことがあります。
- 塩分の摂り過ぎに注意:塩分が多い食事は体に水分をため込み、眼圧に影響を与える可能性があります。外食が続くときは意識して控えると安心です。
- 強い紫外線から目を守る:屋外の観光ではサングラスや帽子を使い、紫外線や眩しさを防ぎましょう。まぶしさを感じにくくなることで、目の疲労も和らぎます。
こうした工夫を意識することで、旅行をより安心して楽しむことができます。病気を抱えていても、「無理をしない」「普段の生活に近いリズムを保つ」ことが、進行予防につながります。
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患者さんからよくある質問
Q. 緑内障があっても飛行機に頻繁に乗って大丈夫ですか?
A. 基本的には問題ありません。多くの方は眼圧の大きな変動なく飛行機に乗れます。ただし、閉塞隅角緑内障の方や手術直後の方は注意が必要ですので、主治医にご確認ください。
Q. 飛行機に乗るときに点眼薬はどうすればいいですか?
A. いつも通り使用してください。機内でも問題なく点眼できます。タイムゾーンが変わる場合は、旅行前に「現地時間でどう使うか」を医師に相談しておくと安心です。
Q. 機内が乾燥して目がしょぼしょぼします。どう対策すればいいですか?
A. ドライアイ点眼(防腐剤なしタイプがおすすめ)を持参し、こまめに点眼しましょう。コンタクトレンズを使っている方は、可能であればメガネに切り替えるとより快適です。
Q. 海外旅行で長期間滞在する場合、薬が足りなくなりそうです。どうすればいいですか?
A. 主治医に相談すれば、旅行期間に合わせて多めに処方してもらえる場合があります。診断書を用意してもらうと海外でも安心です。
Q. 白内障もあるのですが、飛行機に乗るときに気をつけることはありますか?
A. 白内障そのものが飛行機搭乗で悪化することはほとんどありません。ただし、視力が低下していると旅行中の行動に支障が出ることもあるため、気になる場合は旅行前に手術を検討するのも選択肢です。
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まとめ
緑内障があっても、多くの患者さんは問題なく飛行機で旅行を楽しむことができます。大切なのは、普段通りの点眼を続けること、乾燥や血流低下に注意することです。ただし、閉塞隅角緑内障や手術直後の方は例外があるため、必ず主治医と相談してください。
「病気があるから旅行は無理」と諦める必要はありません。正しい知識と準備をすれば、安心して空の旅を楽しめます。緑内障と向き合いながら、人生の大切な時間を豊かに過ごしていきましょう。
千川あおぞらクリニック眼科での緑内障・白内障手術について
千川あおぞらクリニック眼科では、点眼やレーザー治療で十分にコントロールできない患者さまに対して、緑内障手術をご提供しています。症状や眼の状態に合わせて、負担の少ない方法を一緒に検討いたします。
また、多くの患者さまに見られる白内障についても、当院では日帰り手術が可能です。白内障手術と緑内障手術を同時に行うことで、視力の改善と眼圧のコントロールを一度に目指すことも可能です。これにより、患者さまの生活の質(QOL)の向上をサポートいたします。
「緑内障と診断されたが、どんな治療が必要なのか不安」「白内障もあり、将来の視力が心配」という方も、ぜひ一度ご相談ください。眼科専門医が丁寧に診察と説明を行い、最適な治療法をご提案いたします。
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